会社設立で補助金と助成金をどう使い分けるか|性格の違いから決める
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会社設立にあたって「補助金」と「助成金」の両方を目にして、どちらから手をつければいいのか決めかねている方に向けた記事です。二つは所管も採否の仕組みも違います。違いが分かれば、自分の状況でどちらを先に当たるべきかが決まります。
会社設立の資金の話では、補助金と助成金が同じ棚に並べられがちです。実際には所管する省庁が違い、採否の決まり方も違います。混ぜて考えると計画が狂うので、分けて整理します。

所管が違う。だから性格が違う

補助金と助成金のいちばん大きな違いは、どの役所が出しているかです。ここが分かると、性格の違いも自然に理解できます。
補助金は主に経済産業省や中小企業庁が所管しています。狙いは産業の底上げです。だから新製品の開発、設備の導入、販路の開拓といった、事業を前に進める投資が対象になります。予算の枠と採択の件数が決まっていることが多く、審査で選ばれる仕組みです。
助成金は主に厚生労働省や都道府県労働局が所管しています。狙いは雇用と労働環境の改善です。だから人を雇う、正社員にする、処遇を良くするといった取り組みが対象になります。要件を満たせば受けられるものが多く、審査で落とされる性格のものではありません。
会社設立の場面での見分け方
- 1事業への投資を助けたい → 補助金(経済産業省系)
- 2人を雇うことを助けたい → 助成金(厚生労働省系)
- 3地域で創業することを助けたい → 自治体の制度(どちらの呼び名もある)
会社設立の場面では、この三つが同時に視野に入ります。どれか一つに絞る必要はありませんが、性格が違うので準備の仕方も変わります。
名前に惑わされない
注意点がひとつ。「助成金」という名前でも審査がある制度、「補助金」という名前でも要件を満たせば通る制度があります。自治体の制度では特に呼び名が揺れています。会社設立の場面で判断するときは、名前ではなく公募要領の中身を見てください。
出典:J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト(中小機構/2026-09-03 確認)
採否の決まり方が違うと、準備の仕方も変わる

補助金は審査があります。だから準備の中心は、審査の観点に沿った計画書を書くことです。何を書けば評価されるかは公募要領に書かれていて、そこを外すと通りません。
助成金は要件を満たすことが中心です。準備の中心は、計画書の出来ではなく、順番と書類です。所定の時期に所定の届出をしているか、就業規則や労働条件の書面が整っているか。ここが揃っていないと、どれだけ良い取り組みをしても支給されません。

会社設立の直後は時間が限られます。どちらを狙うかで、そもそも準備する物が変わることを知っておいてください。両方を同時に走らせると、どちらも中途半端になります。
実務的には、人を雇う予定があるなら助成金の要件を先に確かめるのが確実です。取り組みの前にやるべきことが決まっているので、後から取り返せないからです。
出典:小規模事業者持続化補助金(中小企業庁/2026-09-03 確認)
雇用系の助成金は、順番が命

会社設立の直後に人を雇う予定があるなら、助成金の順番を先に押さえてください。ここは本当に取り返しがつきません。
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用の方の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇の改善に取り組んだ事業主を助成する制度です。各コースの実施日の前日までにキャリアアップ計画を提出することが求められます。
トライアル雇用助成金の一般トライアルコースは、就業経験の不足などで就職が難しい方を、ハローワーク等の紹介を受けて原則3か月のトライアル雇用として受け入れる制度です。支給額は対象者1人あたり月額最大4万円(最長3か月)です。自分で採用してから申し込むことはできません。

会社設立の直後は、社会保険の手続きも重なります。事業所が健康保険・厚生年金保険に適用されることになった場合、事実の発生から5日以内に新規適用届を日本年金機構へ提出します。この期限がいちばん短いので、まずここから片づけてください。
出典:キャリアアップ助成金(厚生労働省/2026-09-03 確認)
補助金は、投資の中身で選ぶ

補助金は、何に投資したいかで選ぶ制度が決まります。会社設立の直後に現実的なのは、販路の開拓と、業務の仕組みづくりです。
| やりたいこと | 当てはまりやすい制度 | 入口 |
|---|---|---|
| 販路を開きたい・広報したい | 小規模事業者持続化補助金 | 商工会議所・商工会への相談 |
| 創業まもない時期に販路を開きたい | 小規模事業者持続化補助金(創業型) | 同上 |
| 新しい製品やサービスを開発したい | ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 | 公募回ごとの電子申請 |
| 業務をシステムに載せたい | デジタル化・AI導入補助金 | 登録された支援事業者と共同申請 |
| その地域で創業する | 自治体の創業補助金 | 市区町村・都道府県の窓口 |
小規模事業者持続化補助金では、地域の商工会議所・商工会への相談と計画書の確認が申請の前提になっています。会社設立の直後で地域とのつながりが薄い時期でも、この相談が最初の接点になります。
創業型は、中小企業庁の説明によれば、創業後1年以内の小規模事業者等(創業後、事業開始前の事業者も対象)の生産性向上と持続的発展を目的とし、自ら策定した経営計画にもとづく販路開拓等の取組を支援するものです。会社設立の日が要件そのものになる枠です。
出典:小規模事業者持続化補助金について(中小企業庁/2026-09-03 確認)
共通しているのは、どちらも後払いということ

性格の違いを見てきましたが、共通点もあります。いちばん大事なのは、どちらも後払いだということです。
補助金は、事業費の全額をいったん自社で払い、実績を報告して確認が済んでから、補助率の分だけ戻ります。助成金も、取り組みを終えてから支給されます。会社設立の直後に手元を厚くする性格のものではありません。
さらに補助金の場合、多くの制度で交付決定より前の発注・支払いは対象外になります。採択の通知が来た時点で発注すると、その経費は落ちます。会社設立の勢いで動いてしまいがちなところなので、順番だけは守ってください。

だからこそ、会社設立の資金計画では自己資金と融資を柱にしてください。補助金と助成金は、入れば助かる上乗せとして扱うのが安全です。
出典:Jグランツ ネットで簡単!補助金申請(デジタル庁/2026-09-03 確認)
重ねて使えるが、同じ経費に二重は不可

補助金と助成金は、目的と対象経費が重ならなければ重ねて受けられることがあります。会社設立の直後は使えるものを並べて、重ならない組み合わせを探すのが得策です。
ただし、同じ経費に二重に支援を受けることは認められません。たとえば同じ人の同じ期間の人件費を、補助金と助成金の両方から受け取ることはできません。経費の割り振りを明確にしておく必要があります。
- 申請書の「他の制度への申請状況」は正確に書く
- 同じ領収書を二つの制度に出さない
- 経費を分けた根拠を、あとから説明できるようにしておく
- 人件費は特に重なりやすい。期間と対象者を分けて記録する
隠して両方から受け取ると、あとで返還を求められます。会社設立の直後に返還が発生すると、資金繰りへの打撃は小さくありません。最初から分けて記録しておいてください。
重ねやすい組み合わせ
重なりにくいのは、対象が明確に分かれている組み合わせです。設備投資の補助金と雇用系の助成金、販路開拓の補助金と自治体の家賃補助。こうした組み合わせなら、経費を分けて説明しやすくなります。
出典:ものづくり補助金(中小企業庁/2026-09-03 確認)
会社設立の費用そのものは、どちらでも出ない

補助金と助成金の話をするときに、必ず確認しておきたいことがあります。会社設立の登記にかかる法定費用は、どちらの対象にもならないのが通例です。
では下げようがないかというと、そうではありません。市区町村の特定創業支援等事業の証明を受けると、登録免許税が半額になります。株式会社なら最低15万円が7万5千円、合同会社なら6万円が3万円です。補助金でも助成金でもなく、税の軽減という別の支援です。
定款の作り方でも変わります。紙の定款には収入印紙4万円が必要ですが、電子定款にすればかかりません。株式会社の定款認証手数料は、資本金の額等が100万円未満で3万円、発起人が全員自然人で3名以下・発起設立・取締役会を置かない、をすべて満たすときは1万5千円です。

これらは審査がなく、条件を満たせば確実に効きます。会社設立の費用を抑えたいなら、補助金や助成金を探すより先にこちらを検討してください。
出典:産業競争力強化法、経済産業省関係産業競争力強化法施行規則(中小企業庁/2026-09-03 確認)
どちらから当たるかは、状況で決まる

では、会社設立の場面でどちらから当たるべきか。原則は、取り返しがつかないほうを先に、です。

人を雇う予定があるなら、助成金が先です。採用の前にやることが決まっていて、後から満たせないからです。設備や販路への投資なら、補助金の公募回に合わせて準備すれば間に合います。
会社設立の前なら、市区町村の証明が最優先です。これは補助金でも助成金でもありませんが、創業前にしか取れず、確実に効く支援だからです。
Q. 補助金と助成金、金額が大きいのはどちらですか。
A. 一般に補助金のほうが幅があり、大きな金額の制度もあります。ただし審査があり、通らないことがあります。
Q. 会社設立したばかりでも助成金を受けられますか。
A. 要件を満たせば受けられます。ただし労働保険への加入や就業規則の整備が前提になるものが多くあります。
Q. どちらも使わないという判断はありますか。
A. あります。準備に時間を取られて本業が止まるなら、見送るのも正しい判断です。
出典:小規模事業者持続化補助金(創業型)について(中小企業庁/2026-09-03 確認)
まとめ|所管で分けて、順番で決める

補助金と助成金は、所管する省庁が違い、採否の決まり方も違います。会社設立の場面では、この違いを踏まえて準備の仕方を変えることになります。
この記事の要点
- 1補助金は経済産業省系で審査がある。助成金は厚生労働省系で要件を満たせば受けられるものが多い
- 2補助金は計画書、助成金は順番と書類に力を入れる
- 3雇用系の助成金は、採用の前に計画を出す必要がある
- 4どちらも後払い。会社設立の直後の資金は自己資金と融資で組む
- 5会社設立の法定費用はどちらの対象にもならない。証明と電子定款で下げる
この記事の内容は執筆時点で各省庁の公表資料にあたって確認した一般的な整理です。制度は年度ごと、公募回ごとに変わります。会社設立を具体的に進める段階では、必ず所管の窓口と最新の公募要領で裏を取ってください。
出典:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)(厚生労働省/2026-09-03 確認)
どちらから手をつけるか迷ったら
補助金と助成金の違いを頭で理解しても、自分の場合にどちらを先に当たるべきかは、状況によって変わります。判断に迷ったときの目安はひとつ、あとから取り返せないほうを先にです。人を雇う予定があるなら助成金、会社設立がまだなら市区町村の証明。それだけ押さえておけば、大きく外すことはありません。細かい判断は、労働局や商工会議所の窓口で聞いてください。
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