旅行業務取扱管理者|会社設立の前に、この一人を確保する
この記事を読んでほしい方
旅行会社を作ろうとしていて、人の要件を見落としている方に向けた記事です。
営業所ごとに一人。しかも兼任できません。会社設立の前に確保しておく必要があります。

人の要件が、登録の可否を決める

旅行業の登録では、資産の要件がよく話題になります。
ただ、もう一つ重い要件があります。
人です。
旅行業法第六条第一項第九号は、営業所ごとに旅行業務取扱管理者を確実に選任すると認められない者について、登録を拒否すると定めています。
つまり、資産を用意しても、この人がいなければ登録できません。
会社設立をする前に、確保しておく必要があるということです。
自分が資格を取るか、有資格者を雇うか。
どちらにしても時間がかかります。
会社設立の日程を組むときは、この時間も見込んでください。
補助金を探す前に、この要件を確かめてください。会社設立の支援制度をいくら調べても、人の要件は埋まりません。資格は自分で取るか、雇うかのどちらかです。
会社設立の準備では、資産の額に目が行きがちです。ただ、お金は融資や補助金で手当てする道があります。人はそうはいきません。試験に受かるまでの時間は、お金では買えません。だからこそ、いちばん早く動き出すべき部分になります。
出典:旅行業法(昭和二十七年法律第二百三十九号)(e-Gov法令検索/2026-09-09 確認)
営業所ごとに一人以上

必要な人数を確かめます。
旅行業法第十一条の二第一項は、旅行業者等は営業所ごとに、一人以上の旅行業務取扱管理者を選任して、当該営業所における旅行業務に関し、取引に係る取引条件の明確性、旅行に関するサービスの提供の確実性その他取引の公正、旅行の安全および旅行者の利便を確保するため必要な事項についての管理および監督に関する事務を行わせなければならないと定めています。
営業所ごと、という点が重要です。
会社設立の後に営業所を増やすなら、その数だけ必要になります。
さらに、同条第三項では、この規定は旅行業務を取り扱う者が一人である営業所についても適用があるとされています。
つまり、ひとりで始める会社設立でも、その一人が資格を持っている必要があるということです。
社長が資格を持てば足りる、という考え方になります。
逆に、社長が持っていないなら誰かを雇うことになります。
会社設立の直後に人件費が発生するということです。
人を雇うなら、雇用に関する助成金の対象になる場合があります。会社設立の後に求人を出す前、労働局に一度寄ってください。支援の制度によっては、事前の手続きが要ります。
人を雇うと、社会保険や労働保険の手続きも発生します。会社設立の直後にこれが重なると、事務だけで時間が過ぎます。補助金の申請どころではなくなるので、順番を決めて片づけてください。
出典:旅行業法(昭和二十七年法律第二百三十九号)(e-Gov法令検索/2026-09-09 確認)
兼任はできない

もう一つ、厳しい規定があります。
旅行業法第十一条の二第四項は、旅行業務取扱管理者は他の営業所の旅行業務取扱管理者となることができないと定めています。
つまり、一人が二か所を掛け持ちすることはできません。
会社設立の後に事業を広げて営業所を二つにするなら、二人目が要ります。
ただし、同条第五項には例外の定めがあります。
選任しなければならない営業所が複数ある場合において、その複数の営業所が近接しているときについての規定です。
詳しい条件は条文と省令で確かめてください。
会社設立の段階では、まず一つの営業所で始めるのが素直な形です。
広げるのは、人が確保できてからです。
会社設立の直後に営業所を増やす計画があるなら、人の確保が先になります。補助金で店舗を増やしても、資格者がいなければ営業できません。
出典:旅行業法(昭和二十七年法律第二百三十九号)(e-Gov法令検索/2026-09-09 確認)
全員が欠けると、契約できなくなる

人が抜けたときの規定もあります。
旅行業法第十一条の二第二項では、その営業所の旅行業務取扱管理者として選任した者の全てが欠格の事由に該当し、または選任した者の全てが欠けるに至ったときは、新たに旅行業務取扱管理者を選任するまでの間は、その営業所において旅行業務に関する契約を締結してはならないとされています。
つまり、その人が辞めると営業が止まるということです。
会社設立の後、資格者が一人だけという状態は危うい形になります。
病気や退職で、事業がそのまま停止します。
二人目を育てるか、社長自身が取るか。
どちらかの手当てが要ります。
会社設立の直後は難しくても、数年のうちに考えておいてください。
人の要件は、資産の要件より切実な場面があります。
会社設立の一年目に人を育てるのは負担が重い話です。ただ、人材の育成に使える支援の制度もあります。厚生労働省の助成金の棚を、一度見ておいてください。
資格者が一人しかいない状態は、事業の継続という点でも弱くなります。融資の相談や補助金の審査でも、この体制は見られる可能性があります。会社設立から数年で二人目を確保する計画を立ててください。
出典:旅行業法(昭和二十七年法律第二百三十九号)(e-Gov法令検索/2026-09-09 確認)
取り扱う旅行で、必要な試験が変わる

資格の種類も確かめます。
観光庁の案内では、旅行業務取扱管理者になるためには、一定の欠格事項に該当しない人で、国家試験に合格する必要があるとされています。
そして、その営業所の取り扱う旅行業務の種類により、必要な試験が異なるとされています。
海外旅行を取り扱う営業所については、総合旅行業務取扱管理者試験の合格者が必要です。
国内旅行だけを取り扱う営業所については、総合旅行業務取扱管理者試験か国内旅行業務取扱管理者試験の合格者です。
主たる営業所所在地の隣接市町村までの範囲の旅行業務であれば、地域限定旅行業務取扱管理者試験の合格者でよいとされています。
つまり、扱う範囲が狭いほど、求められる資格も軽くなります。
会社設立で地域限定から始めるなら、地域限定の試験でよいということです。
どの区分で登録するかと、どの試験を受けるかは連動しています。
会社設立でどの区分を選ぶかは、資格の話ともつながっています。補助金の要件とは別の軸で、先に決めてください。
出典:旅行業務取扱管理者(観光庁/2026-09-09 確認)
地域限定の試験という入口

地域限定旅行業務取扱管理者試験は、観光庁が実施を案内しています。
扱える範囲が限られる代わりに、試験の範囲も狭くなります。
会社設立で地域限定旅行業から始めるなら、この試験が入口になります。
基準資産額は百万円、営業保証金は取引額400万円未満なら15万円です。
協会に入れば、分担金は3万円になります。
つまり、資産の要件も人の要件も、地域限定なら最も軽くなるということです。
地元の観光を扱う小さな会社設立には、この組み合わせが合います。
事業が育ってから、上の区分へ移るという道もあります。
試験の実施の時期は、観光庁の案内で確かめてください。
会社設立の後に事業が育ったら、上の区分へ移ることもできます。そのときは資格も取り直しになるので、支援の計画に入れておいてください。
地域限定から始めて実績を作り、後から範囲を広げる。この進め方なら、会社設立の直後の負担を抑えられます。補助金の支援も、事業が動き出してからのほうが狙いやすくなります。
出典:地域限定旅行業務取扱管理者試験(観光庁/2026-09-09 確認)
五年ごとの定期研修がある

資格は、取れば終わりではありません。
観光庁の案内では、旅行業者等はその営業所において選任している旅行業務取扱管理者について、五年ごとに、旅行業協会が実施する旅行業務取扱管理者定期研修を受講させなければならないとされています。
つまり、会社の側に受講させる義務があるということです。
本人任せではありません。
会社設立の後、五年ごとにこの予定が来ます。
登録の更新も五年なので、時期が近くなることもあります。
研修を実施するのは、旅行業協会です。
協会との関係は、営業保証金の面でも研修の面でも続くことになります。
会社設立の準備の段階で、協会に話を聞いておいてください。
会社設立の後に続く義務として、この研修も覚えておいてください。補助金の実績報告と同じで、期限のあるものです。
研修の費用も、会社の負担になります。会社設立の後の固定費として、あらかじめ見込んでおいてください。補助金で埋まる性質のものではありません。
出典:旅行業務取扱管理者(観光庁/2026-09-09 確認)
会社設立の前に、確保する手順

人の要件を満たすには、次の順で動いてください。
- 扱いたい旅行の範囲を決める(海外・国内・地域限定)
- その範囲に必要な試験を確かめる
- 自分が受けるか、有資格者を雇うかを決める
- 自分が受けるなら、試験の日程から会社設立の時期を逆算する
- 雇うなら、その人件費を資金計画に入れる
- 二人目をどう確保するかも、あわせて考えておく
日本政策金融公庫は創業計画書の様式と記入例を公開しています。人件費を含めた収支の見通しを、そこに書き込んでください。
Q. 何人必要ですか。
A. 営業所ごとに一人以上です。旅行業務を取り扱う者が一人である営業所にも適用されます。
Q. 兼任できますか。
A. 他の営業所の旅行業務取扱管理者となることができないとされています。
Q. 辞めたらどうなりますか。
A. 選任した者の全てが欠けると、新たに選任するまでその営業所で契約を締結してはならないとされています。
Q. どの試験を受ければいいですか。
A. 海外を扱うなら総合、国内だけなら総合か国内、隣接市町村までの範囲なら地域限定です。
Q. 取ったら終わりですか。
A. 五年ごとに、旅行業協会が実施する定期研修を受講させなければならないとされています。
会社設立の資金計画では、この人件費が大きな割合を占めます。補助金の支援では埋まらない部分なので、融資と自己資金で見てください。
試験の合格発表から登録の申請までにも時間がかかります。会社設立の日程は、余裕を持って組んでください。
出典:創業計画の書き方|START 政策金融公庫の創業支援(日本政策金融公庫/2026-09-08 確認)
まとめ|資産より、人が先に要る

旅行業の登録では、人の要件が壁になることがあります。
この記事の要点
- 1営業所ごとに一人以上の旅行業務取扱管理者を選任しなければならない
- 2旅行業務を取り扱う者が一人である営業所にも適用される。ひとりで始めるなら自分が資格者になる
- 3他の営業所の旅行業務取扱管理者となることができない。兼任は不可
- 4選任した者の全てが欠けると、その営業所で契約を締結できなくなる
- 5扱う範囲で必要な試験が変わる。五年ごとの定期研修も義務
会社設立の準備で、補助金の情報を集めるより先にやるべきことです。支援は、登録が下りてからの話になります。
制度を横断して探すなら、J-Net21のような支援情報のサイトも使えます。旅行業の登録とあわせて見てください。
この記事は2026年9月時点で観光庁と旅行業法にあたって確認した内容です。要件は改正されることがあります。必ず観光庁と登録行政庁でご確認ください。
出典:J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト(中小機構/2026-09-03 確認)
資格をまだ持っていない方へ
旅行業の登録では、資産の額ばかりが話題になります。ただ、実際に多くの方が止まるのは人の要件です。営業所ごとに一人、しかも兼任はできません。ひとりで始めるなら、社長自身が資格者になる必要があります。試験には日程があり、勉強にも時間がかかります。会社設立の日を決める前に、まずその日程を確かめてください。
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