外国人の会社設立でつまずく実務|印鑑証明・資本金の払込み・事業所の確保
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外国籍の方の会社設立で、制度の説明は読んだけれど実際の窓口で何が起きるかが分からない方に向けた記事です。手続きの流れそのものは日本人の場合と同じでも、印鑑、口座、住所の三つで詰まることが多くあります。どこで止まりやすいのか、その前にどう手を打つかをまとめました。
外国籍の方の会社設立は、制度上の壁より実務の壁でつまずきます。印鑑証明書が取れない、資本金を払い込む口座がない、事業所の実態を認めてもらえない。どれも事前に手を打てば避けられるものです。

印鑑証明書が取れないときは、サイン証明で代える

会社設立の登記では、発起人や役員の印鑑証明書が求められます。日本に住民登録があり印鑑登録ができる方なら問題ありませんが、そうでない場合はここで止まります。
本国に印鑑の制度がない場合、大使館や領事館で署名(サイン)についての証明を受け、印鑑証明書の代わりとする方法があります。この証明を取るのに時間がかかることがあるので、会社設立の予定日から逆算して早めに動いてください。
注意したいのは、必要な書類の形式が窓口によって細かく違う点です。事前に法務局へ問い合わせるか、司法書士に確認してもらうのが確実です。作り直しになると、会社設立の日程がまとめて後ろにずれます。
- 日本に住民登録があるなら、市区町村で印鑑登録ができるか確認する
- できない場合、本国の在外公館でサイン証明を取る
- 取得にかかる日数を先に聞いておく
- 本国語の書類には、日本語の訳文を付ける
会社の実印は別に作る
個人の印鑑証明とは別に、会社の実印(代表者印)も必要です。こちらは日本で作成することになります。会社設立の商号が決まった時点で発注しておけば、登記の直前に慌てずに済みます。
補助金の申請でも、代表者の本人確認を求められる場面があります。会社設立のときに用意した証明の写しが、そのまま使えることも多くあります。取得した書類は、原本と写しを分けて保管しておいてください。会社設立の直後は書類が散らかりやすいので、最初に置き場所を決めておくと後が楽です。
出典:日本での拠点設立方法 Section 1. 登記(日本貿易振興機構(ジェトロ)/2026-09-03 確認)
資本金の払込みは、口座の問題で止まりやすい

会社設立では、資本金を払い込んだことを証明する必要があります。ところが、この時点ではまだ法人が存在しないので、法人名義の口座はありません。発起人の個人口座に払い込み、その通帳の写しなどで証明するのが一般的な進め方です。
外国籍の方の場合、その個人口座を日本国内に持っているかどうかが分かれ目になります。来日して間もない時期は、口座の開設そのものに時間がかかることがあります。会社設立の準備の中で、いちばん早く動いておきたい部分です。

在留資格「経営・管理」を取る前提なら、資本金または出資の総額が3,000万円以上とされています。これだけの金額を海外から送金する場合、着金までの日数と手数料、為替の変動も見込んでおいてください。
資本金の額は、会社設立の後に狙える補助金の対象範囲にも関わります。国の補助金の多くは中小企業者や小規模事業者を対象としていて、その線引きに資本金の額が使われるためです。在留資格の要件を満たす金額が、狙う補助金の枠に収まるかどうかを、あらかじめ確かめておいてください。
出典:日本での拠点設立方法(対日投資)(日本貿易振興機構(ジェトロ)/2026-09-03 確認)
事業所は「独立した場所」であることが問われる

在留資格「経営・管理」では、事業所が確保されていることが求められます。ここで言う事業所は、独立して事業を営める実態のある場所です。会社設立の本店所在地をどこにするかが、そのまま審査に響きます。
自宅の一室やバーチャルオフィスは、事業所の実態を認められないことがあります。会社設立の費用を抑えたい気持ちは分かりますが、ここを削ると在留資格の段階で行き詰まります。
| 場所の形 | 確認しておくこと |
|---|---|
| 賃貸のオフィス | 賃貸借契約の名義。法人設立前なら発起人名義で契約し、後で変更できるか |
| 自宅の一部 | 生活の場と事業の場が区切られているか。契約上、事業利用が認められているか |
| バーチャルオフィス | 事業所の実態として認められない場合がある。在留資格の審査で不利になりやすい |
| シェアオフィス | 専有区画があるか。契約の内容によって扱いが変わる |
もうひとつ、事業所の場所は自治体の創業支援の対象を決める要素でもあります。市区町村の特定創業支援等事業の証明は、その市区町村で創業する方が対象です。会社設立の場所は、在留資格と支援の両面から選んでください。
契約の名義をどうするか
会社設立の前は法人が存在しないので、賃貸借契約を発起人の個人名義で結ぶことになります。設立後に法人名義へ切り替えられるか、貸主に事前に確認しておいてください。切り替えができないと、事業所の証明で困ることがあります。
補助金の側から見ても、事業所の実態は重要です。自治体の創業補助金では、住所地や事業所の実態を示す書類として賃貸借契約書を求められることがあります。在留資格のためだけでなく、支援を受けるためにも、実態のある場所を選んでおくほうが選択肢が広がります。
出典:在留資格「経営・管理」(出入国在留管理庁/2026-09-03 確認)
書類は日本語でそろえる

会社設立の登記の書類は日本語で作成します。本国で発行された書類を添える場合は、日本語の訳文を付けるのが原則です。翻訳者の氏名を記載するよう求められることもあります。
氏名や住所の表記も、細かいところで揃える必要があります。パスポートの表記、在留カードの表記、登記に使う表記。これらがずれていると、あとの手続きで本人確認がうまくいきません。会社設立の最初の段階で、どの表記を使うかを決めてください。
- 本国の書類には日本語の訳文を付ける
- 氏名の表記(アルファベット・カタカナ・漢字)を一つに決める
- 住所の表記を、登記事項証明書と同じ形にそろえる
- 翻訳者の氏名の記載が求められることがある
表記のずれは、補助金の申請でも効いてきます。申請書に書く商号や所在地は、登記事項証明書のとおりでなければなりません。会社設立の段階で表記を固めておくと、あとの支援の申請が楽になります。
補助金の公募要領も申請様式も日本語です。会社設立の登記で日本語の書類に慣れておくと、その後の申請の負担が少し軽くなります。分からない語は、その場で調べて用語のリストを作っておくと、二回目からの速度が変わります。
出典:商業・法人登記の申請書様式(法務局/2026-09-03 確認)
登記が終わってからも、手続きは続く

会社設立の登記が完了すると、一区切りついた気持ちになります。ただ、そこからが本番です。期限の短い届出がいくつも来ます。
税務署へは、法人設立届出書を設立の日(設立登記の日)以後2か月以内に提出します。社会保険は、事業所が健康保険・厚生年金保険に適用されることになった場合、事実の発生から5日以内に新規適用届を日本年金機構へ提出します。常勤職員を雇う前提なら、この5日という期限が最初に来ます。

法人名義の口座は、外国籍の方の場合、開設に時間がかかることがあります。事業の内容を説明する資料を求められることも多いので、事業計画書を用意しておくと話が早く進みます。
この口座は、補助金の入金先にもなります。会社設立の直後に口座の開設が遅れると、支援の申請そのものが進みません。登記が終わったらすぐ動いてください。
届出が一段落したら、補助金の準備に入れます。電子申請に使うGビズIDのアカウントは、会社設立の登記が済んだ時点から申請できます。郵送の方式だと1〜2週間かかることがあるので、他の届出と並行して進めておくと、公募が出たときにすぐ動けます。
出典:C1-4 内国普通法人等の設立の届出(国税庁/2026-09-03 確認)
費用を抑えられるところ、抑えてはいけないところ

会社設立には費用がかかります。外国籍の方の場合、翻訳や証明書の取得も加わるので、なおさらです。ただ、削ってよい場所とそうでない場所があります。
削ってよいのは、法定費用のうち工夫で下がる部分です。紙の定款を電子定款にすれば収入印紙4万円がかかりません。市区町村の特定創業支援等事業の証明を受ければ、登録免許税が半額になります。株式会社なら最低15万円が7万5千円、合同会社なら6万円が3万円です。

補助金は、この表のどちらにも出てきません。会社設立の費用そのものを補助する制度はほとんどないからです。費用を下げるのは工夫で、補助金は事業を始めてからの投資に使う。この切り分けを覚えておいてください。
出典:産業競争力強化法、経済産業省関係産業競争力強化法施行規則(中小企業庁/2026-09-03 確認)
一人で抱えないための頼り先

ここまで見てきたとおり、外国籍の方の会社設立は確かめることが多くあります。全部を一人で調べるのは現実的ではありません。頼り先を分けてください。
Q. 在留資格について相談できる場所はありますか。
A. 出入国在留管理庁が運営する外国人在留支援センターでは、在留資格の変更や更新について相談できる窓口が設けられています。受付には日本語・英語・中国語を話せる職員がいます。
Q. 日本での拠点設立の方法を、公的な資料で確認したいのですが。
A. ジェトロが対日投資の情報として、会社設立の手続きに関する資料を複数の言語で公開しています。東京・横浜・名古屋・大阪・神戸・福岡に相談拠点があります。
Q. 補助金の相談はどこにすればよいですか。
A. 地域の商工会議所・商工会、市区町村の産業振興の担当課、各補助金の事務局です。在留資格の窓口とは分かれています。
Q. 会社設立の登記を自分でできますか。
A. できますが、書類の形式が細かく決まっています。外国籍の方の場合は特に、司法書士に確認してもらうほうが確実です。
公的な窓口は無料で使えます。会社設立の準備で費用がかさむ時期だからこそ、使えるものは使ってください。
出典:外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)(出入国在留管理庁/2026-09-03 確認)
まとめ|印鑑・口座・住所の三つを先に片づける

外国籍の方の会社設立でつまずくのは、制度の理解ではなく実務の三点です。印鑑証明書、資本金を払い込む口座、そして事業所の確保。ここを会社設立の登記より前に片づけておけば、あとの手続きは日本人の場合とほとんど変わりません。
この記事の要点
- 1印鑑登録ができない場合は、在外公館のサイン証明で代える
- 2資本金の払込みには日本国内の個人口座が要る。開設に時間がかかる
- 3事業所は独立した実態のある場所を選ぶ。バーチャルオフィスは弱い
- 4本国の書類には日本語の訳文を付け、氏名と住所の表記を一つに固める
- 5登記後は、5日以内・2か月以内といった短い期限の届出が続く
この記事は執筆時点で公表資料にあたって確認した一般的な整理です。求められる書類の形式や在留資格の判断は、事案によって異なります。会社設立を進める前に、法務局・出入国在留管理庁・専門家にご確認ください。
出典:外国・外資系企業への支援サービス(日本貿易振興機構(ジェトロ)/2026-09-03 確認)
準備を始める方へ
会社設立の手続きは、日本人にとっても分かりにくいものです。そこに言葉と制度の違いが重なると、負担はさらに大きくなります。それでも、つまずく場所はだいたい決まっています。印鑑、口座、住所。この三つを早めに片づけてしまえば、あとは順番に進むだけです。手が回らないと感じたら、公的な相談窓口と専門家を分けて頼ってください。全部を自分で抱える必要はありません。
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