会社設立費用は誰が払うのか|発起人の立替と、定款に書く費用
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会社設立の準備で、自分の財布から先に払っている方に向けた記事です。後の精算の話です。
会社ができる前に、会社の口座はありません。誰かが立て替えるしかない構造になっています。

会社ができる前に、会社は払えない

会社設立の準備では、順番の問題がついて回ります。
定款の認証も、登録免許税も、会社が成立する前に払うものです。
ところが、その時点では法人の口座がありません。
法人の口座は、登記が完了して登記事項証明書が取れてから開くものだからです。
つまり、会社設立の費用は誰かが立て替えるしかない構造になっています。
多くの場合、それは発起人です。
設立の登記の申請は、本店の所在地を管轄する法務局におこないます。
申請の前後で、いくつもの支払いが発生します。
どれも、個人の財布から出ていくことになります。
この時期に補助金を当てにするのは難しいと考えてください。国の補助金は会社設立の後の事業への投資が中心で、設立の手続きそのものには届きません。支援を探すより、手元の資金を確保するほうが先になります。
共同で会社設立をする場合は、さらに整理が要ります。誰がいくら立て替えたかを、その場で決めておかないと後で揉めます。持分の話とは別に、立替は立替として記録してください。
出典:商業・法人登記申請手続(法務局/2026-09-03 確認)
会社に負担させるなら、定款に書く

ここで、会社法の規定が関わってきます。
会社法第28条は、株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は定款に記載し、または記録しなければ、その効力を生じないと定めています。
その第4号が、株式会社の負担する設立に関する費用です。
ただし、括弧書きで除かれるものがあります。
定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く、とされています。
つまり、定款の認証の手数料は、定款に書かなくても会社の負担にできるということです。
同じ条の第1号から第3号には、現物出資、財産引受け、発起人が受ける報酬その他の特別の利益が並んでいます。
これらはまとめて、会社の財産を減らすおそれがある事項として扱われています。
会社設立の費用も、その一つとして位置づけられているということです。
会社設立の実務では、この条文を意識せずに進むことも多くあります。それでも、後から補助金や融資の相談で資金の流れを聞かれたときに、説明できるかどうかが変わります。支援を受ける前提で動くなら、押さえておく価値があります。
なぜ定款に書かせるのか。発起人が自由に費用を会社へ付け回せると、成立した会社の財産がその分だけ減るからです。株主になる人や取引先から見れば、知らないうちに負債を負わされることになります。だから、あらかじめ定款で開示させる仕組みになっています。
出典:会社法(平成十七年法律第八十六号)(e-Gov法令検索/2026-09-08 確認)
法務省令で除かれるもの

では、法務省令で定めるものとは何か。
会社法施行規則第5条には、会社法第28条第4号に規定する法務省令で定めるものとして、次が挙げられています。
- 定款に係る印紙税
- 設立時発行株式と引換えにする金銭の払込みの取扱いをした銀行等に支払うべき手数料および報酬
- 会社法第33条第3項の規定により決定された検査役の報酬
- 株式会社の設立の登記の登録免許税
会社法第28条第4号の本文にある定款の認証の手数料と合わせると、五つが除かれることになります。
これらは金額が法令で決まっていて、発起人が水増しできる性質のものではありません。
だから、会社に損害を与えるおそれがないとされています。
逆に言えば、それ以外の費用を会社に負担させるなら、定款に書く必要があるということです。
会社設立の実務で、この整理を知らずに進める方は多くいます。
この五つは、いずれも会社設立に必ずかかるものです。金額も決まっています。補助金の対象経費を考えるときと同じで、線引きの根拠がどこにあるかを知っておくと迷いません。
出典:会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)(e-Gov法令検索/2026-09-08 確認)
定款に書かなかった場合

実際には、定款に設立費用を書かないことがよくあります。
書くと検査役の調査が問題になる場面もあり、実務では避けられがちです。
その場合、会社法上は会社の負担とする効力が生じません。
つまり、発起人が自分で負担したという形になります。
ただし、税務の扱いは別です。
法人税基本通達には、法人がその設立のために通常必要と認められる費用を支出した場合において、当該費用を当該法人の負担とすべきことがその定款等で定められていないときであっても、当該費用は創立費に該当するものとするとされています。
会社法の話と、税務の話は、別の筋道で動いているということです。
会社設立の後にどう処理するかは、税理士に相談してください。
ここは自己判断で決めないほうが安全です。
会社設立の後に補助金の支援を受けると、決算の数字が動きます。創立費をいつ落とすかの判断も、そこに絡んできます。会社法の整理と税務の整理を分けて考える癖をつけてください。
実務では、定款に書かず、発起人が負担したまま処理を進める形が多く見られます。金額がそれほど大きくないためです。会社設立の規模によっては、この判断で十分な場合もあります。ただ、どちらを選んだかは自分で分かっておいてください。
出典:法人税基本通達 第8章第1節 繰延資産の意義及び範囲等(国税庁/2026-09-08 確認)
立て替えた分を、どう記録するか

実務として大事なのは、記録です。
会社設立の準備の支払いは、個人名義でおこなわれます。
領収書の宛名も個人になり、法人の帳簿とは切り離されます。
だから、意識して集めないと散ります。
日付、支払先、金額、内容の四つを並べた一覧を作ってください。
登記の申請書の様式は法務局が公開しているので、必要な書類は事前に把握できます。
何を払うことになるかが分かれば、記録の準備もできます。
会社設立が済んでから思い出そうとすると、必ず抜けます。
準備を始めた日から、その日のうちに書いてください。
この一覧は、後の補助金の申請でも使えます。会社設立にいくらかかったかを聞かれる場面は、支援の相談で何度も出てきます。作り直す手間を省けます。
出典:商業・法人登記の申請書様式(法務局/2026-09-03 確認)
資本金から払ってよいか

よく聞かれるのが、資本金から会社設立費用を払えるかという問いです。
資本金は、発起人が設立時発行株式と引換えに払い込む金銭です。
この払込みは、会社設立の手続きの一部として、指定した口座におこないます。
払込みがあったことを証する書面が、登記の添付書類になります。
つまり、払い込んだ記録そのものが手続きの証拠です。
その口座から先に費用を引き出してしまうと、証明が作りにくくなります。
定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じないとされており、その手数料も認証の場で必要になります。
順番としては、認証、払込み、登記の申請という流れです。
どのお金をどこから出すかは、この順番に沿って決めてください。
会社設立の資金をどこから出すかは、融資や補助金の相談でも聞かれるところです。自己資金と借入と立替が混ざっていると、説明に時間がかかります。支援を受けるつもりなら、最初から分けておいてください。
払込みの証明をどう作るかは、金融機関や登記の形態によって変わります。会社設立の前に、通帳の写しをどう取るかまで含めて段取りを決めておいてください。ここでつまずくと、登記が数日遅れます。
出典:定款認証(日本公証人連合会/2026-09-03 確認)
会社設立の後に、精算する

登記が完了すると、法人の口座を開けるようになります。
そこから、立て替えた分の精算に入ります。
一覧と領収書を添えて、会社から発起人へ支払う形です。
金額が大きいときは、いったん借入金として処理し、資金に余裕が出てから返すこともあります。
会社設立の直後は現金が細いので、無理に一度で精算しなくても構いません。
どちらにせよ、帳簿に残る形にしてください。
税務署への届出も、会社設立の後に期限があります。
法人設立届出書をはじめ、出すべき書類が決まっています。
精算とあわせて、この時期に片づけてください。
精算が済むと、会社設立にいくらかかったかが帳簿の上で確定します。そこから先が、補助金を使う段階です。支援の申請に必要な法人番号も、この時期に指定されます。
精算のときは、振込の記録が残る形にしてください。現金で渡すと、後から追えなくなります。会社設立の直後の処理は、そのまま一期目の帳簿に残ります。
出典:C1-4 内国普通法人等の設立の届出(国税庁/2026-09-03 確認)
補助金や融資の相談でも、この記録が効く

立替の記録は、税の処理のためだけではありません。
融資の相談では、資金の流れを説明することになります。
会社設立の前に自分がいくら出したかは、そのまま自己資金の話につながります。
日本政策金融公庫は創業計画書の様式と記入例を公開しています。
必要な資金と調達の方法を書く欄があるので、そこに整理した数字を落とせます。
補助金の申請でも、会社設立の経緯を書く場面があります。
Q. 会社設立費用は会社が払えますか。
A. 設立前は法人の口座がないため、発起人が立て替えるのが通例です。
Q. 定款に費用を書く必要はありますか。
A. 会社の負担とするには記載が要ります。ただし定款認証の手数料など五つは除かれます。
Q. 書かないとどうなりますか。
A. 会社法上は会社の負担とする効力が生じません。税務上は通常必要な費用なら創立費に該当するとされています。
Q. 資本金から払ってよいですか。
A. 払込みの証明が必要になるため、順番に注意が要ります。専門家にご確認ください。
Q. 精算はいつしますか。
A. 法人の口座ができてからです。一度でなくても構いませんが、帳簿に残してください。
会社設立の経緯を数字で説明できる会社は、支援の窓口でも話が早く進みます。補助金の審査でも、資金の裏づけは見られます。
出典:創業計画の書き方|START 政策金融公庫の創業支援(日本政策金融公庫/2026-09-08 確認)
まとめ|払った人と、負担する人を分けて考える

会社設立費用は、払う人と負担する人が一致しないことがあります。
この記事の要点
- 1会社が負担する設立に関する費用は、定款に記載しなければ効力を生じない(会社法28条4号)
- 2定款の認証の手数料は、その記載から除かれる
- 3施行規則5条により、定款の印紙税・払込取扱銀行等の手数料および報酬・検査役の報酬・設立登記の登録免許税も除かれる
- 4定款に定めがなくても、通常必要と認められる費用は税務上は創立費に該当するとされている
- 5立て替えた分は、日付・支払先・金額・内容を一覧にして残す
支援の情報は、J-Net21のようなサイトからも探せます。会社設立の後、資金の相談とあわせて見ておいてください。
この記事は2026年9月時点で会社法、会社法施行規則、法人税基本通達、法務局の公表内容にあたって確認した内容です。個別の判断は状況で変わります。必ず司法書士・税理士にご確認ください。
出典:J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト(中小機構/2026-09-03 確認)
自分の財布から出し続けている方へ
会社設立の準備が進むほど、個人の口座からお金が出ていきます。定款の認証で数万円、登録免許税で十数万円。会社のためのお金なのに、自分が払っている。この状態は、法人の口座ができるまで続きます。だからこそ、書き留めておくことが唯一の対策になります。日付と金額を並べた紙が一枚あれば、後の精算も、決算も、融資の相談も進みます。
他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください
会社設立の補助金について調べるときに、あわせて見られているサイトです。掲載の順番は、おすすめの度合いや優劣を示すものではありません。内容は各サイトの運営者にご確認ください。
- 丸の内公証役場|手数料について
公証役場の側から、定款認証を含む手数料の考え方を示しています。
- RSM汐留パートナーズ司法書士法人|株式会社の定款認証に係る公証人手数料の一部改定
定款認証の手数料が改定された点を、司法書士の視点で整理しています。
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税理士監修で、株式会社と合同会社の設立費用を項目別に解説しています。
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